緊張型頭痛とパニック障害04

(1) 遺伝的原因

パニック障害は脳の機能的障害、つまり脳内物質(神経伝達物質)のバランスが失調した状態です。

もともと私たちの脳内には扁桃体と言う脳内器官があります。
これは私たちヒトを含めた脊椎動物が5億年前のカンブリアの海の中に出現して以来、脳内に存在していました。

その働きは「恐怖」です。

「敵ガ来タゾ! 逃ゲロ!」と言う、危険情報の受信と逃走反応の間をつなげるもであり、生命の維持のために欠かせない衝動でした。
それがあればこそ、闘う手段を持たない原始的な脊椎動物が始原の海で命長らえて来られたのです。

扁桃体は、脊椎動物の進化にともなって身体が複雑化していっても、脳を構成する器官が増加していっても、脳内の最も奥にあって現役で働いています。

どんな人間であっても、生きている限り、対象は何であれ、恐怖を感じないなどということはあり得ません。
確かに5億年の間に脊椎動物も進化して逃走一点張りではなくなっていますが、扁桃体が発す売る恐怖・不安の信号は、脊椎動物をして「逃げるか・闘うか・固まるか」のどれかの反応を採らしめるように威力を発揮します。

私たちの脳内にあって、この扁桃体の発する恐怖・不安の信号を、抑制しているのが扁桃体自身と海馬(記憶の中枢)、前頭前野(意志と理性の中枢)を含む、セロトニンを伝達物質とするセロトニン神経系です。
ところが、何らかの理由でセロトニンの分泌が減少し、セロトニン神経系の機能が衰えると、扁桃体からの恐怖・不安の信号が過剰に高まり、「逃げるか・闘うか・固まるか」の反応を誘発する自律神経(交感神経)の異常更新、すなわち、「敵ガ来タゾ」→「呼吸ガ早マル・動悸ガ高鳴ル・手ニ汗握ル」と言う過剰反応(パニック発作)に走ってしまうのです。
むろん、敵は長いこと、捕食者でした。
私たちの5億年前の先祖であるピカイアから、現在の秋田県の山菜採りの老人まで。
ですが、それだけでなく、私たち現世人類は、最初のグランドデザインである、数家族で、動物や可食植物を追って季節移動するる、と言うプリミティブな社会から大きく逸脱した、広域的で重層歴な社会を作り上げてしまいました。
その中には捕食植物はいないけれど、同等かそれ以上のマイナスの刺激を扁桃体に与えるものが、無数に潜んでいます。

ただし、この原因の理論的根拠は、パニック発作にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が効くと言う臨床的知見が元になっている、いわば後付の理論です。
あくまで仮設ということですが、パニック発作に関する大脳生理学的研究はこの方向で進められているようです。

(2) 環境的素因

パニック障害の主な原因はフロイト流の精神分析的な葛藤が根本にあると思われて来ました。
しかし近年では薬物治療だけでなく、認知行動療法の有効性が明確になってきたことから、ストレスや過労が最初のパニック発作の原因となっていると考えられています。

パニック発作が起きた状況が条件づけられ、それが積み重なり(予期不安)、その状況を選択的に避けるようになり、最終的に広場恐怖が形成されて行くという道筋です。

(3) 薬物の濫用

ニコチン

ニコチンはもともと脳内でごく少量分泌されていて、ドーパミンやセロトニンの分泌を促しています。
ですから、タバコを吸うと「気分が覚醒」したり「気分が落ちつく」と感じるのは、喫煙によって外部から侵入したニコチンに反応してドーパミンやセロトニンが分泌されるからです。

ですが、ニコチンの半減期は30分程度で、時間とともに覚醒作用や鎮静作用は減少します。
そうなるとニコチンへの欲求が増大して再度ニコチン摂取に走ります。
つまり、ニコチンが切れると不安感にかられるようになります。

もともと不安要素を持つ人がニコチンを摂取すると一時的に落ち着きますが、それは擬似的な鎮静作用に過ぎません。
何らかの理由でニコチンの供給が絶たれた状態に陥ると、不安感が急激に増大し、結果としてパニック発作を引き起こす事になります。

また、ニコチンは血管を収縮させる作用があります。
そのために脳に十分な酸素を供給しにくくなる事が緊張型頭痛を誘発する原因になります。

さらに、ニコチンは上記のうように覚醒作用があるので自律神経の交感神経を優位にさせ、全身の血管、特に頭部の血管を収縮させてしまうので、血行不良を引き起こし、それが緊張型頭痛の原因ともなります。

緊張型頭痛とパニック障害05へ続く

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