パニック障害の治療は薬物療法と心理療法01
パニック障害の治療として行われるのは薬物療法と心理療法があります。
1.薬物療法
(1) 使用薬物
パニック発作の原因が、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンの欠乏、もしくはアンバランスの結果生じるものという仮説があります。
この仮説に合わせて、ノルアドレナリン・セロトニンのバランスを改善するべく次の3種類の薬剤を使用します。
使用される薬剤は「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」・「抗不安薬」・「三環型抗うつ薬」です。
(a) SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
SSRIはパニック障害に一番良く使われる薬剤で、脳内のセロトニンを増やす作用があります。
効果が出るまでに2~3週間かかります。
副作用として吐気や眠気がありますが、抗不安薬に比べると軽いとされています。
(b) 抗不安薬
パニック障害に使用される抗不安薬は、ベンゾジアゼピン系薬です。
SSRIが使われるようになる前は、パニック障害治療に一番多く使われていました。
副作用としての眠気や吐気はSSRIよりも強く、依存性・習慣性などの問題があります。
(c) 三環系抗うつ剤
上記の薬剤で効果が出ない場合に使用されます。
便秘や眠気、喉の渇きなどの副作用が強いので推奨されていません。
(2) SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と抗不安薬の使い分け
現在、パニック障害の治療のための薬剤として認められているのは、SSRIはパロキセチンとセルトラリンです。
投薬を開始した最初の2~3週間はSSRIの薬効が現れないため、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬をバックアップとして併用します。
これは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が抗不安効果では即効性が認められている一方で、副作用がSSRIよりも強く、長期機関服用すると依存性・習慣性が15~44%の割合で見られるからです。
(3) SSRIによるパニック発作のコントロールと離脱症状
SSRIは1週間ごとに量を増やし、パニック発作を抑えられる量で1~2年くらい服用を続けます。
その後パニック発作が起こらなくなるのを確かめながら、徐々に減量していきます。
減量の結果パニック発作が再発した場合は、すぐに、元の量に戻します。
調子が良いからといって、自分勝手な判断で量を減量したり、服用を中断する事は絶対に禁止事項です。
薬を減量する事は、必ず医師と相談して、指示に従って様子を見ながら行います。
SSRIは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や三環系抗うつ薬に比べて副作用が少ないと言っても、突然中断すると、SSRI離脱症候群と言う強い離脱症状が現れる場合があります。
俗称としてシャンビリと言います。
耳鳴りがシャンシャンとなって、手足がビリビリ痺れると言う症状が由来です。
シャンビリは、もちろん医学的な専門用語ではなく、患者の間で用いられたスラングなのですが、SSRI(離脱症候群の特徴)をとても良く表している言葉です。
具体的な症状は、下記の通りです。
- 耳鳴り
- 電気ショック感覚(しびれ)
- 不眠
- 吐き気
- めまい
- 発汗
- 音や光に対して過敏になる
- 震え
- ソワソワ感
SSRI服用の減薬や中断をしてから半日~数日以内に上記のような症状が出現した場合、シャンビリ(SSRI離脱症候群)を疑う必要があります。
なぜ、このような離脱症状が起こるのかは、抗うつ剤・抗不安剤全般に言えることですが、これらの薬効成分の血中濃度が急激に下がったことに身体が対応しきれずに生じると考えられています。
特にSSRI離脱症候群は、セロトニンに対する働きかけが主要な機能である薬剤であるだけに、セロトニンが関係していると考えられていますが、その詳細な機序はいまだ完全に解明されていません。
SSRIは医師の指示を守り、適切に服用すれば、副作用は比較的少なく安全な薬ですが、何事も個人差というものがあって、眠気やめまいなどの副作用が現れる場合は医師と相談してください。
また、アルコールはSSRIの副作用を悪い方へ増強しますので、服用中の飲酒は厳に謹むべきです。
と言いつつも、酒で薬を流しこむのを日常にしていた人間はどこにでもいるのが現実というものです。