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うつ病の克服『副作用の出ない』治療法

「副作用の出ない」治療法の1つ目です。

認知療法とか認知行動療法と言う治療法です。

アメリカが何か先進的なことを始めて実績を重ねると、日本が後追いをするのは、医学の分野だけでなくどの分野でも見られる事です。

認知療法は”Cognitive therapy”、認知行動療法は”cognitive behavior therapy”をそれぞれ訳したものです。

認知療法・認知行動療法とは、私たちのものの考え方や受け取り方(認知)に働きかけて、気持ちを楽にしたり、行動をコントロールしたりする治療方法です。

厚労省の「うつ病対策マニュアル」の中から抜粋すると、

「認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法です」

1970年代にアメリカでうつ病に対する精神科の治療方法として開発されたモノです。
うつ病を始めとする、不安障害やストレス関連障害・パーソナリティ障害・摂食障害などの精神疾患に対する治療効果と再発予防効果に実績を積み重ねました。
日本でも1980年代後半から注目されるようになり、文科省から補助金が出て研究が進み、実績を挙げてきました。

この療法は、最近流行の情報処理モデル、あるいは認知モデルを基盤とした治療法と言えます。
その理論は、

「私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けているのですが、通常は半ば自動的にそして適応的に行われています。しかし、強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが生じ、非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が引き起こされ、さらに認知の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。」

と言うものです。

私たちは、何か辛く感じることが起きたときには、それが「良かった」か「悪かった」かどちらかに決めつけたくなります。
しかし、実際の生活で起きた状況や出来事をハッキリと「良かった」・「悪かった」特別できる事ばかりではありません。

たとえば、「おおむね上手くいっている」場合でも、ある部分は「ダメだ」と言うことはよくありますし、逆に「ダメだ」と言う場合でも「全てダメ」と言うわけでもなく、ある部分は「何とか」と言う場合もありがちなことです。

そこそこに上手くいったり、思うようにいかなかったり、白か黒かを決められないグレーゾーンと言う状態であったりする事の方がほとんどです。
コトワザにも「人生万事塞翁が馬」とか「禍福は糾える縄の如し」と言うように、ある状況や出来事は、その後の展開で全く変わっていきます。

何事も短期間に決めつけるのはよそう、と言うことです。

また、先々の心配は誰しも心の隅に抱いていますが、その心配が心の大部分を占領したり、「心配する」と言う行為自体に溺れこんだりする事は避けようという事でもあります。

自分が心配していることが現実に起こっているのかどうか、もし起こっているのならばどのように解決して行けば良いのか、を現実に眼を向けながら1つ1つ確認していくのが認知療法のアプローチです。

うつ病を治療するためには、認知の歪みを把握して、少しずつでもそれを修整していく事が必要です。
認知の歪みとして挙げられるのは以下の10個です。
ストレス社会の昨今のこと、誰しも当てはまる事柄は1つや2つではないでしょう。

1.All or nothing(全か無か)思考

世の中で起こる状況や出来事を「白か黒か」でしか認めないと言う考え方です。
現実では、どちらとも言えない事態がよくあります。
完璧なモノはほとんどありません。
ですが、完璧主義に陥ると、大体の所は上手くいっているにも関わらず、細かいところが気になりすぎて、自分自身を常に監視して責め苛むような心理状態になります。

これは自らを牢獄に閉じ込めるような行為です。
この思考を変えるためには、現実というモノは白黒をつけられることの方が少ないモノだと思い切ることです。

2.一般化のしすぎ

1つの失敗や間違いがあると、それが全てであるかのように捉える考え方です。

仕事で1回失敗したときに「自分はいつも失敗ばかりしているダメなやつ」と思い詰めてしまいます。
「いつも」・「すべて」・「みんな」・「絶対」と言う言葉が口癖になります。
「いつも」失敗ばかりする人も、「いつも」上手くいく人もいません。
失敗した知性こうしたり繰り返したりしている人がホトンドです。
本当に「いつも」・「すべて」・「みんな」・「絶対」そうなのかとチェックするようした方が良いでしょう。

3.心のフェイルター

肯定的な事を無視して、否定的な事のみを事実として捉える考え方です。

ほめられてもそれを無視し、嬉しいことも無視します。
悪い事や辛いことだけを事実とするのです。

たとえばうつで入院復帰したときに、同僚から「最近は体調も良くなってきたし、よくやってくれている」と言われてもその事を無視して、
「以前だったらこんなミスをしなかったのに。まだ体調が悪いんだね」と言われたことだけを記憶にとどめます。

まるで自分を苦しめたたいかのようです。
良かったこと・嬉しかったことをキチンと認識することが現実的な視点というモノです。

4.マイナス思考

嬉しいことやほめられたことをそのまま受け取らず、脳内で悪い事に変換する考え方です。
「何か裏があるのでは」とか「内心では馬鹿にしているんだ」などと言う思考法です。

全ての出来事に対して悪く考えるので、簡単に「絶望」の2文字になじんでしまいます。

あまりにも「脳内お花畑」では生きていけませんが、「お先真っ暗」だけでも生きていけません。

5.心の読み過ぎと先読みの誤り

人の心を勝手に読みすぎる事と、将来を勝手に悲観する事です。

たとえば、「あの人からメールが来ないのは、私が昨日言った事に対して怒っているからだ」とか「私が復職したとしても、また体調不良になって休職に逆戻りだ」と言う事です。

キーワードは「勝手に」です。

実際に、人の心は解りませんし、将来がどうなるかは誰にも解りません。

解らない事を「勝手に」に想像したり、悲観したりして、「勝手に」苦しんでいると言う事です。
超能力者でもあるまいし、人の気持ちも将来も解りようがあるでしょうか。
解ったつもりになったとしてもそれは事実ではありません。

「想像」と「事実」は明確に分けて考えなければなりません。

6.拡大解釈と過小評価

悪い事を必要以上に大きく捉え、成功した事や嬉しい事を必要以上に小さくします。

たとえば、仕事で連絡不足でプロジェクトの進捗が1日2日滞ったとします。
ミスは誰にでもあるものですが、連絡を忘れた事を一大事にしてしまい、自分を責め続けるような状態です。
「ミスしたのはしょうがない。次はがんばろう」と思えず、絶望的な気分になってしまいます。
実際は1日や2日の遅れならば、今後のがんばり方次第で十分にフォローできるのに、落ち込みっぱなしで遅れがさらに広がってしまいます。
逆に、あなたの働きでプロジェクトが成功して周囲から評価されても、「そんな事はたいした事じゃない。運具良かっただけだ」と、素直に喜べません。

この考え方は、失敗したら無論の事、成功しても気分は陰々滅々です。

物事を客観的に見なければなりません。

7.感情的決めつけ

事実ではなく、あなたの感情に基づいて判断する事です。

何となく不安な気持ちだから、一旦停止したり、Uターンしてしまいます。

何となく落ち込んでいるから、「この仕事はダメだ」と考えます。

事実とは関わりなく、気分を優先させてしまうので、気分に振り回されてしまいます。

あなたがどのように思うかではなく、状況を冷静に見つめて判断しなければなりません。

8.must または have to 思考

4文字熟語で書くと「自縄自縛」の考え方です。

電車では携帯の電源を「切るべき」と思い込んでいる老人が、スマホをいじる若者に怒りをあらわにする。

自転車が車道左側通行を「すべき」と思い込んでいるのに、夜間無灯火車道右側通を見ると怒りをあらわにする。

「すべき」と言うのは、それぞれの個人の勝手な決めつけであって、全員がその「すべき」をもっていると言うワケではない事を理解しなくてはなりません。

多くの「すべき」は、親や学校・会社・お役所などの環境の都合によって作られたモノであって、それが絶対に正しい掟であると言う事ではありません。

自分だけでなく、他人をも苦しめる「すべき」に気づいてください。

9.レッテル貼り

「男だから」・「女だから」・「ゆとり世代だから」・「団塊世代だから」・「~~だから」……と言うのは、レッテル貼りです。
このように人々を十把一絡げにして一括りにしてしまうのは楽なので、ついつい易きに流れてしまいます。
ですが、男性でも様々な人がいるし、団塊世代だからといって問題行動を起こすわけでもないのです。
安易にカテゴライズできるものではありません。

このレッテル貼りが自分に向かうと「わたしはどうせ~~だからダメ」と言う考えに陥りやすくなります。
あなたも周囲の人も、1つの言葉で括る事ができるほど単純ではありません。
残念ながら多くの人ははレッテル貼りが大好きなようで、そのために悔し涙に暮れる人も多くいるはずです。

10.個人化

全ての事を自分の責任として捉えてしまう事です。

会社の業績が右肩下がりなのも、家庭内が不和なのも、「全て自分のせいだ」と言うように感じてしまうことです。
一人の人間の責任で何かもかもダメになると言う事は、滅多にありません。
無論、あなたの責任もあるかもしれませんが、関わった人全ての連帯責任でもあるのです。

強すぎる責任感は、人を奈落の底へ追い込んでいきます。

さて、これを読んだ方におかれましては、当てはまる認知脳歪みはいくつあったでしょうか。
たぶん1つや2つではないでしょう。
大切なのは自分の認知の歪みに可及的に速やかに気づく事です。

気づいたら、次はその歪みを客観的に見つめ直すことです。

では、やってみて上手く行った method を。

(1) 紙に書くこと

頭の中だけで考えを広げてはいけません。
手で書き、目で見ないままの思考は、袋小路に迷い込み、何が認知の歪みで、何が客観的な事実なのかが解らなくなります。

必ず紙に書きましょう。

(2) 頭に浮かんだことをそのままに書く

浮かんだことをそのままに書いてください。
「今日は予定の8割しかできなかった。最悪」とか書きます。
誰かに見せるわけではないのですから、本音を。

(3) 認知の歪みを見つける

次は思考の歪みを見つけます。
「予定の8割しかできなかった」と言うけれど、それでも予定の8割もできたわけです。
これは「All or nothing 思考だ」と気付いていきます。
他にも何かしらうまくいった事もあったのに無視しているから、「心のフィルタ」があるかもしれません。
思いつく限りの認知の歪みを書き出してください。

(4) どのような考えかを客観的に書く

「今日は予定の8割しかできなかった」を「今日は予定の8割できた。明日は10割を目指そう」に書き換えます。

(5) 根気よく続ける

最初は認知の歪みを見つけるのも、客観的に考えるのも、慣れていないのですから、難しいでしょう。
知らないうちに考え方が固定化して硬直しているかもしれません。
普段から不断に認知の歪みをさらけ出すための棚卸しを繰り返していきましょう。

以上(1) ~(5) のメソッドでした。

これを読んで解ったような気分になるだけでは効果はあまりありません。

自分の頭を使って、自分の考えを紙に書き、紙に書かれた文章を眼で見て、客観思考のトレーニングし続ける事が大切です。

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