トップページ >> うつとリーマス(錠)

リーマス(錠)の概要

リーマスとは薬の名前で一般名称は炭酸リチウム(Li2CO3)の事を言います。
うつ治療では気分の高揚の抑制(抗躁作用)や気分の落ち込みを持ち上げたりする(抗うつ作用)気分安定薬として利用されます。
気分安定薬はそれぞれ用途によって種類が異なりその中で一番古いタイプと言われます。
日本での発売は1980年ですが1886年頃から効能は一部で知られていました。
現在でも双極障害系のうつ治療用に使われています。
しかし古い薬である為、副作用などの問題点が多く細心の注意が必要に成ります。

主な3作用

躁状態の抑制作用 うつ状態の改善 気分の衝動を抑える

双極性うつ病には上記の特徴を有するリーマス錠は単体で症状抑制できる為、使い勝手に優れ、躁と鬱に対応意外に加え鎮静作用で衝動的な行為を抑制する機能も有し自ら命を絶つことや暴力と言った行為の防止としても有効です。

副作用

アルカリ金属類のリチウムを使用している関係から、大量摂取により体にリチウムが蓄積され、中毒に浸る場合もあり深刻な状態に至るケースも有する。

治療域

リーマス錠での治療を難しくしているのが治療域の近接です。
つまり薬としての有効量と中毒域が微量の差である事を意味します。
医療者、専門家は罹患者の血中濃度を頻繁に測定した上で使用する必要が在ります。
叉他に服用している薬や個人の体質によっては危険なケースも有ります。

リチウム中毒

  • ①意識障害・震え・傾眠・錯乱などの中枢神経系の障害
  • ②血圧低下・不整脈等の循環器系の障害
  • ③嘔吐・下痢等の消化器系の障害
  • ④運動障害・運動失調等の運動機能障害
  • ⑤発疹・発熱等、全身症状

上記の様に中枢神経系から全身症状に至るまで多義の亘る中毒症状を発し、重症の場合は命に拘わる為、軽視できません。
叉催奇形性(奇形子が生まれる)も在りえる為、妊婦などへの服用は禁止されています。

リーマス良い特徴

抗躁、抗鬱双方の作用が期待させ、特に抑うつ症状の抑制面で優れています。
再発抑制や衝動的言動抑止にも効果があります。

リーマス悪い特徴

中毒や奇形子出産の可能性、作用機序が不明。
叉、単独服用の場合は治療域が狭い事により量的管理が困難。
作用機序とは投薬と効果の因果を体重や年齢などから鑑みて概算(予測)可能性や効能ロジックの事です。

作用機序の<仮説>
  • ①リチウム(Li)には神経保護作用があり気分の波を安定させる作用を有する。
  • ②Liには細胞の死滅を抑制させ能細胞容量の増加作用を有す。

LiにはIMPaseという酵素抑制の作用を有し、この結果イノシトールと言われる物質が分泌を減少させ脳内の情報伝達効果を促進させる。

LiにはGSK-3β(グリコーゲン合成酵素キナ―ぜ3)という名の酵素に作用しこの事によって精神的安定作用を促進させている。

補強治療

双極障害の特徴として客観的に躁状態が異常症状として目立つ事から罹患者自身の悩みも躁状態の方に推測され易いと思われています。
実際は相反して罹患者の7~8割方はうつ状態の方に苦痛を感じていると云う統計結果が在ります。
気分安定剤は躁状態の抑制のみ又はうつ状態の改善のみを目的とした薬が多く、躁と’うつ’を同時に抑制効果が在る事は強力な副作用を除いては罹患者にとっても大きなメリットと言えます。
リーマス特性を応用して難治性のうつ病にも利用されています。
この場合抗うつ剤と少量のリーマスを投与し併用する事により抗うつ機能の補強強化が期待出来ます。

この様な手法を補強治療と言われ、Liの大量接収による副作用の危険性も回避出来ます。

リーマスの歴史

ランゲというデンマークの精神科医が脳内の尿酸量が原因でうつ病が発症すると推測し尿酸リチウムを採用しイオン状の尿酸を沈殿化(中和)させ脳内から排除する事だ出来ました。
結果的に一定の効果(鎮静作用)が得られた事が最初の発見と言われます。
続いてオーストラリアの精神学者ケイドが動物実験で興奮状態にある動物への尿酸リチウム投与により鎮静作用があった事を発見。

上記の様に1800年代末頃にはすでに経験上、興奮や抑うつ症状の回復に有効であると推測されていました。
海外ではリーマスは1950年代には臨床採用されています。
日本での発売は1980年代で30年ほど認可に時間が掛かっていた様です。

人類史上最も古いタイプに部類する向精神薬類の利用は概ね1900年代に入ってから臨床採用されている事からリーマスはより古い薬という事に成ります。
1960年代の第一世代の抗精神薬の定型抗精神約、三環系抗うつ剤など現在でも利用されますが効果や副作用がきつい為に難治療時以外は殆ど採用されません。
他方、略同時代に生産されたリーマスは双極性うつ病の服用に現在も第一線で使用されている事は精神薬の中では最長のロングセラーという立場に成ります。

使用上の注意

非ステロイド性消炎鎮静剤、利尿剤、降圧剤はリーマスの血中濃度を高める作用を有し併用は副作用の危険が増す事から、リーマス投与前に主治医と相談する必要が有ります。

腎機能疾患を抱えている場合、脱水し易い体質、60歳以上の場合は体質上、血中濃度が高めな傾向に成りやすい為、上記の理由と同様、使用は制限されます。

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