緊張型頭痛とニコチン
JT(日本たばこ産業)は1965年以降「全国たばこ喫煙者率調査」を毎年実施しています。
2016年も調査が実施され、男女合わせて19.3%と言う喫煙者率の結果が出ました。
喫煙率ピークの1996年には49.4%と約2人に1人の割合だったのが、約5人に1人まで減っているという事です。
JTは消費税引き上げでタバコ代が値上がりしたことや、健康意識の高まり、嫌煙権運動などが要因と見ています。
NHKニュースによると、JTは「殆どの年代でタバコを吸う人の割合が減っており、この傾向は今後も続くのではないか」とコメントしているのだそうです。
ズイブンと他人事のようなコメントではありますが、是非そうであって欲しいものです。
とは言うものの、筆者がこれまで遭遇した集団の中には、異常に喫煙率が高い集団がありました。
- 教材販売のセールスマン
- 建設業従業員
- 警備員
- コントロール喪失団体
任意に10人引っ張れば、そのうち9人か全員が喫煙者と言う、ニコチン中毒集団なのです。
この集団が折りに触れ喫煙を続けている場所は、紫煙がミルフィーユ状に重なって、ありとあらゆるものにタバコの臭気が染み付き、タールが厚い層をなします。
そこへ一歩足を踏み込めば、喉や気管が侵食され、眼はチクチクと痛み、そして頭痛がしてきます。
筆者も23歳から20年間喫煙者でしたが、諸般の事情から43歳に喫煙をやめました。
当時はすでにニコチンガムが販売されており、インターネットに載っていたメソッドに従って、3ヶ月かけて禁煙に成功しました。
タバコをやめて、最初にその効果を実感したのは破壊されていた味覚が復活した事です。
安い紅茶の茶葉を出涸らしたものの味がわかるようになっていました。
安い紅茶はそのパックに葉だけでなく細い枝の切れっ端も結構詰め込まれていて、葉から成分が抜け落ちても細枝の切れっ端から味が出続けている事がわかったのです。
そして心肺機能も徐々に賦活して、実感したのは冬になって積雪の中をマウンテンバイクで走り始めた12月の事でした。
前年の冬には積雪の中を自転車で走行した場合、5kmも走行するとゼイゼイハーハー状態でして、「こいつは年だな」などと残念に思っていました。
それがその年の12月中旬には16kmの雪道を平気で走破してしまいました。
あの息切れは年のせいではなく、タバコ(ニコチン・タールを代表とする約200種類以上の有害物質)が心肺機能を損壊していたのです。
それ以来自転車で走行する限りは息切れ知らずに自転車で雪道を走行しています。
あらためて、タバコの成分を調べてみると、タバコの煙の中には約4000種類の化学物質が含まれ、先述のように、その中の約200類以上の物質が有害物質であり、その中でも発癌物質は50種類を越してしまいます。
特に有名なのはニコチンであり、これはゴキブリ用の殺虫剤の成分として配合されています。
その他にも一酸化炭素、ヒ素、カドミウム、シアン化水素などの化学物質が含まれています。
これに加えて先述のタール(発癌性物質)、ニッケル(これも発癌性物質)など、医学・薬学・化学の知識をかじった人ならば、自分自身はもちろんの事、家族から遠ざけたいと思うものばかりです。
タバコと緊張型頭痛
では、それらの有毒物質が人体に与える影響を、緊張型頭痛周辺に絞って紹介します。
煙草の煙の中には、主に肺から吸収されると同時に、口腔・気道・胃・腸の粘膜から体内に入ります。
その中でもニコチンは極めて吸収が早く、喫煙後すぐに血管を通って様々な臓器に運ばれます。
脳へは肺を通過してから10秒もかからずに到達します。
ニコチンが脳にどのような作用を及ぼすのかは置いといて、緊張型頭痛においては、脳内・頭部を含む血管に及ぼす作用です。
人体にはニコチン作動性アセチルコリン受容体と言うものがあり、血管にも分布しています。
これにニコチンが結合すると血管が収縮します。
また、ニコチンは2つある自律神経の交感神経を刺激します。
交感神経は身体活動をバックアップするため機能する神経系で、それが優位になると全身の筋肉が緊張するとともに血管が収縮します。
血管が収縮すると、血液の流れが滞ります。
特に脳への血流の停滞は致命的です。
なぜなら脳は常に大量の酸素とブドウ糖を希求してやまない臓器だからであり、供給が途絶えればすなわち死へとつながりかねないからです。
そのため、血管収縮による酸素供給不足は強烈な警告をリリースします。
それが頭痛です。
頭痛には4種類に大別されます。
- 1つ目は脳の疾患(脳梗塞・くも膜下出血・脳腫瘍)による頭痛
- 2つ目は偏頭痛
- 3つ目は群発型頭痛
- 4つ目が緊張型頭痛です。
その中でも最も多くの人々が悩まされているのが4つ目の緊張型頭痛です。
頭が輪っかで締めつけられたような痛みです。
緊張型頭痛の原因はニコチン?
原因は、上述のように、血管の収縮です。
タバコのニコチンには、血管の強い収縮作用がありますので、タバコを吸うことで緊張型頭痛が起こることがあります。
また、既に緊張型頭痛を起こしている人がタバコを吸うと、当然ながら痛みがひどくなります。
ただ、タバコは前述のように毒のカクテルのようなもので、人によっては毒の中の幾つかが作用して、あるいは同じ毒でも違う作用が身体に起こって、緊張型頭痛以外の頭痛を誘発することがあります。
タバコが引き金になって偏頭痛が起こる場合があります。
上述のように、タバコを吸ってニコチンを摂取することで血管が収縮します。
血管が急激に収縮した後で、反作用として血管を元に戻そうとして血管を膨張させようと言う力が働きます。
その結果、血管が過度に膨張すると、周囲の神経を刺激してしまいます。
その結果発症するのが偏頭痛です。
こうなって来ると、タバコを吸ったら頭痛が……と来たら緊張型頭痛だから、そのための対策をするという事では通用しなくなるかもしれません。
少なくとも偏頭痛の対策も必要になってきます。
タバコは頭痛以外にも…
タバコと頭痛の関係は緊張型頭痛や偏頭痛だけではありません。
また、喫煙によるニコチン摂取の結果、薬理作用によって副腎を刺激し、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。
これらは血管を収縮させます。
すると心臓としてはより大きな力で血液を送り出す必要が出てくるため、結果的に血圧が上昇します。
高血圧です。
さらには、喫煙による一酸化炭素の吸収により、血中の赤血球上のヘモグロビンが酸素を運ぶ能力が低下し、全身に酸素を運ぶ機能が下降します。
その上に、喫煙は血液中の遊離脂肪酸を増加させる作用があります。
この遊離脂肪酸の増加によって、血小板が血管壁にくっついて離れない癒着現象を引き起こし、粥状硬化の発生を高めます。
結果として高血圧だけでなく心臓血管系の合併症をも引き起こしやすくなります。
これらの身体の異常は当然のことながら脳内にも影響を与えます。
脳内の動脈硬化などの血管の異常で、脳内の血管が膨張すれば偏頭痛ですし、収縮すれば緊張型頭痛になります。
規模が小さくとも脳内出血となれば激しい頭痛が起こります。
これらの頭痛は、症状とそれに対する療法は確立されていて、病院で受診してそれぞれの症状を訴えれば、それぞれに対応する薬剤が処方されるでしょう。
ですが、大元の原因が除去されなければ、いくら薬剤を投与しても、頭痛を根本的に治癒するこできません。
諸病の原因は喫煙にあるのですから、さっさとその行為をやめてしまえば良いのです。
1~2週間程度は離脱症状がでるのでしょうが、身体からニコチンが抜けた暁には、頭痛はまったくの別世界のものになるはずです。
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