パニック障害の2つの国際的診断基準
パニック障害の診断基準を紹介します。 パニック障害(panic disorder)は臨床現場において、主に2つの国際的診断基準に基づいて診断されています。
一つ目は、米国精神医学会(American Psychiatric Asociation:略してAPA)により2000年に作成された、精神疾患の診断・統計マニュアル第4版・解説改訂版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fourth Edition,Text Revision:略してDSM-Ⅳ-TR)です。
二つ目は、世界保健機関(World Health Organization:略してWHO)により1992年に作成された、国際疾病分類第10版(International Classificition of Diseases, tenth edition:略してICD-10)です。
どちらの国際的診断基準を使用するかについては、各医師の診断に委ねられていますが、 筆者は新しいもの好きであったりするので、DSMⅣ-TRを表に、ICD10を裏にして紹介します。
1.パニック発作
以下の項目のうち4つ以上が突然現れ、10分間以内にその症状が頂点に達する。
(以下の項目のうち4つ以上が現れ、そのうち1項目は(1) ~(4) のいずれかである。)
- (1) 動悸
- (2) 発汗
- (3) 身震い
- (4) 息切れ・息苦しさ
- (5) 喉が詰まる感じ(窒息感)
- (6) 胸部不快感・胸痛
- (7) 腹部不快感・嘔気
- (8) めまい・ふらつき・気が遠のく感じ
- (9) 周りが現実でない感じ(現実感の喪失)・自分自身の体から離れる感じ(離人症状)
- (10)コントロールを失う(気が狂う)事に対する恐怖
- (11)死ぬことに対する恐怖
- (12)感覚麻痺・うずき感
- (13)冷感・熱感
ICD10
- (14)口渇
2.パニック障害
(1) ~(2) を満たす。
- (1) パニック発作を繰り返す
-
- (2) 発作後1ヶ月以上は下記の少なくとも1つを満たす
- A もっと発作が起こる
- B 「コントロールを失う」「死んでしまう」「気が狂う」恐怖(破局的認知)
- C 著名な行動変化(例えば、仕事を辞める、運動を避けるなど)
ICD10
-
- (2) 下記のすべてを満たす
- A 明確に区別される激しい恐怖・不安
- B 突発的な開始
- C 数分のうちで最強となり、少なくとも数分間は持続
- (3) 発作は物質や身体疾患・他の精神疾患によるものではない
3.広場恐怖症
- A パニック発作(パニック様症状)が起きた(または起きる可能性がある)時に助けが得られない場所や状況にいる事についての不安。(典型的な状況:家の外に1人でいること、混雑の中にいること、または列に並んでいること、橋の上にいること、バス・電車または自動車で移動していること)
- B その状況が回避されているか、非常に強い苦痛または不安を伴いながら耐え忍んでいるか、または同伴者をともなう必要がある。
- C 物質・一般身体疾患・他の精神疾患によるものではない(ただし「パニック障害の既往歴のない広場恐怖」において、関連のある一般身体疾患が存在しかつ、通常の恐怖を明らかに超えている場合は広場恐怖とする)。
ICD10
- A 不安は、以下の状況のうち少なくとも2つ以上で生じる→雑踏、公衆の場所、家から離れての旅行、および一人旅
- B 恐怖的な状況の回避が、際立った特徴でなければならない。
- C 心理的症状あるいは自律神経症状は、不安の一時的発現でなければならず、妄想あるいは強迫的思考に対する二次的なものであってはならない。
どちらを選ぶにしても、医師にはかなり高度な聞き上手でなければならない事は確かだと思います。
精神科医ともなると、手術が少ない代わりに、この手の能力がなければ成り立たない商売だから、言語能力の不自由な人は大変でしょうね。
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