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更年期障害の根本治療『ホルモン補充療法』

ホルモン補充療法は更年期障害の根本治療だと言われています。
激変する体内のホルモン環境(女性ホルモンの激減)を緩和し、身体を閉経後の状況にゆるやかに適応させるための、クッションのような役割を担うものだと思っていただけると、この治療本来の意味も理解しやすいと思います。
日本ではまだあまり普及していませんが、更年期障害に悩まされている方は、治療法の選択肢の1つとして考慮に値する治療法です。

この治療法の目的は急激に減少するエストロゲンを必要最小限に補充する事です。

ただ、エストロゲンだけを補充すると、子宮からの出血や乳房の張りなどの副作用を伴う事が多いため、それを防ぐために黄体ホルモン(プロゲステロン)と言うもう1種類の女性ホルモンを併用して実施していきます。
この2種類のホルモンを補充していくのが基本的な方法です。
この2種類のホルモンをどのように組み合わせて使用していくのかは、患者の年齢や閉経の有無、子宮の有無、健康状態によっていくつかのコースに分かれています。

女性ホルモンを補充する方法として「飲み薬」「貼り薬」「塗り薬」の3種類があります。

飲み薬

経口錠剤です。
薬剤は小腸から吸収され、肝臓を経て血液中に入ります。

錠剤の種類には3種類があります。

  • 「エストロゲン単剤(プレマリン・ジュリナ・エストリールなど)」
  • 「プロゲステロン単剤(ヒスロン・プロペラなど)」
  • 「エストロゲン・プロゲステロン配合剤(ウェールナラ)」

貼り薬

貼り薬(パッチ)をへその横や腰に貼る方法です。
飲み薬に比べて胃腸や肝臓への負担は軽くなりますが、かゆみ・かぶれなどの皮膚症状が出ることもあります。

塗り薬

お腹に塗って使用するジェル剤で、皮膚から血中にエストロゲンを取り込む方法です。
これも飲み薬よりも胃腸や肝臓への負担は軽いですがかゆみ・かぶれなどの皮膚症状は出ます。

治療法の効果

この治療法の効果として以下の項目を列挙します。

  • (1) 女性ホルモン(エストロゲン)の急激な低下に伴って発症する自律神経失調症には効果が期待できます。
    特に冷えやノボセ・発汗・動悸・息切れと言った血管運動神経症状は治療開始とともに速やかに改善します。
  • (2) アンチエイジング効果も発揮します。
    皮膚や粘膜の萎縮や感想による皮膚のかゆみ・膀胱炎様の症状・オリモノの異常などが日を追って軽快して行きます。
  • (3) 骨塩量(一定量の骨の中に含まれるミネラル分--大部分はカルシウムとリンである--の量を示す指標)の減少の予防
  • (4) 骨粗鬆症の発症の予防
  • (5) コレステロール値の上昇を予防
  • (6) アルツハイマー病を予防する効果

列挙すると何か万能の治療法のような印象を持たれるかもしれませんが、そのようなことはありません。
この治療法はあくまでで失われた、あるいは失われつつある女性ホルモンを補充するだけのもであって、女性ホルモンの低下に起因する症状以外のものには効果は期待できません。
心因性の症状(不眠、イライラ)は管轄外です。

ただし、あくまで外部からホルモンを補充する療法なので、この療法を受けられない方もいらっしゃいます。
原則、女性ホルモン補充により病状を悪化させるような疾患をお持ちの方は、この治療を行えません。

  • (1) 乳がん・子宮がんの方
  • (2) 血栓症の治療薬を処方されている方
  • (3) 糖尿病患者の方で血糖値降下剤を服用されている方

それから、この療法に関する文章を読んだ方が必ず持たれる疑問について。
生理不順や生理痛の重篤な方、生理前のイライラなどの月経前症候群の治療を目的に、ピルを服用されておられる方も多数いらっしゃいます。
ピルはエストロゲンとプロゲステロンを含んだ混合ホルモン剤ですので、基本的にホルモン補充の目的で使用することは可能です。

しかし、ピルに含まれるエストロゲンの薬効の強さはホルモン補充法で使用するものの4倍以上もあります。
このため、ピルを閉経後に引き続き長期間に渡って継続使用すると乳がんや血栓症などのリスクが増加します。
ピル服用者の方は閉経年齢(日本の場合は50歳前後)が近づいたら、ピルからホルモン補充療法への切り替えのタイミングを決めるために、かかりつけの産婦人科医と相談してください。

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