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緊張型頭痛とADHD03

たとえば地下鉄で、列車が近づいて来る音がして、いきなり母親の手を振り払ってホームに向かって走り出す幼年男子もしくは幼年女子。

これははっきり言って恐怖です。

特に東西線よりも南北線でこの手の幼児を目撃する事が多かったような気がします。

現在は地下鉄と言えばもっぱら東西線を利用していて、ホームドアがあるので安心していられますが、たまに南北線を利用(と言っても大通-札幌感なんですけど)する時は何かしら緊張してしまいます。

ADHD(attention deficit hyperactivity disorder:注意欠陥・多動性障害)と言う、病気の原因は何なのでしょうか。

1980年代まで、その手の障害の原因をすべて「母親の育て方のせい」と言いつのる教育評論家が多かったような印象があります。
「母原病」と言う言葉が、未成年による衝撃的な事件が起こるたびに濫発されていた時代がありました。

それに対して、ヒトという生き物は、脳の中での大脳皮質とそれ以外部分の発達がアンバランスなので、障害の原因は「母親の育て方」1つとは限らないと言う意見は少数派ながらありました。
ですが、遺伝とか先天性脳機能障害などと言う言葉を使うのは、事実上タブーだったので大きな声にはなり得ませんでした。

それが主にUSAでの大脳生理学の発展とともなってタブーは打ち破られ、身も蓋もなく、「遺伝が原因」とか「原発性脳機能障害」、あるいは「神経伝達物質のアンバランス」と言う言葉が使われるようになってきました。

ある意味、残酷な話のように思われるかもしれません。
ですが、「歩行困難の原因は股関節障害が原因」とか「歩行困難は膝蓋腱炎症が原因」と認識する歩行困難の治療の前提であるように、「発達障害の原因を何らかの脳機能の障害」と認識するのが問題解決の前提です。

ADHDのヒトの脳機能を調べてみると、通常のヒトと機能の仕方が異なる事が解ってきました。

特に顕著なのは、脳の特定の部位の機能が不活発である事です。
その機能の不活発さがADHDの行動特性と関わっているのではないか、と議論されています。

それはどこかというと、

  • 前頭前野
  • 尾状核

の二カ所です。

それぞれについて説明します。

(1) 前頭葉

ヒトの大脳で感覚野、運動野に属さない部位を連合野と呼びます。
その連合野を頭頂部は前頭部の前頭連合野、頭頂部の頭頂連合野、側頭部の側頭連合野に3分されます。

前頭連合野は別名を前頭葉と言います。

前頭葉は頭領連合野と側頭連合野から、感覚刺激に関して高次な処理を受けた情報が集中しています。
また、海馬・扁桃核などの辺縁系、視床下部・中脳網様体なのど脳幹部と神経繊維で双方向連絡を取り合っている中枢の中の中枢です。

思考や創造性を担う最高中枢であると考えられています。
前頭葉は系統発生的にヒトで最もよく発達した部位であるとともに、個体発生的には最も遅く成熟する脳部位です。
一方、老化に伴って最も早期に機能低下が起こる部位の1つでもあります。

この脳部位(前頭葉)はワーキングメモリー(学習や認知などの情報を処理するために一時的に保持される作業記憶の事)・反応抑制・行動の切り替え・プランニング・推論などの認知・実行機能を担っています。
また、高次な情動・動機付け機能とそれに基づく意思決定過程も担っています。
さらに社会的行動・葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係しています。

さて、ADHDがあるヒトは、この部分の血流量が通常のヒトよりも少ないと言うデータがあります。

前頭葉は、脳に入力された情報を的確に認識し、状況や場面に応じて適切な反応や行動を示したり、自分の注意や感情、行動をコントロールする働き(「実行機構」と言います)を司っていると言われています。

ADHDの場合、前頭前野の機能が十分に機能しない事により、集中力の維持、感情の抑制、行動の計画、思慮深さ、ワーキングメモリーなどに弱さが見られます。
つまり、注意をそらさずに我慢する事、自意識や時間の意識が弱いと言う事です。

(2) 尾状核

尾状核は大脳の内奥部に位置する神経核で、行動や運動をスムーズにコントロールする為の調節機能を司っています。
前頭葉と連携して適切な行動を促すために機能しています。
また、学習と記憶システムの重要な部分を占めています。

ADHDのあるヒトの場合、脳画像検査を行うと、尾状核の発達がADHDではないヒトに比べて少ない傾向が見られます。
この部分の発達や機能に弱さが、反射的な反応の抑制、皮質領域への神経入力の調整を妨げたいます。
つまり、衝動的な行動の原因です。

これらの脳機能障害は、複数の遺伝子異常がこれらの部位の萎縮に関係していると、多くの研究者が考えています。

また、ADHDの行動特性のもう1つの原因として、脳内の神経細胞どうしの連絡を補助する神経伝達物質の活動が不活発であることも上げられます。

神経伝達物質は、神経活動を行う際に神経細胞どうしで送り送られる電気信号を伝達する機能を担う物質です。

ADHDと関係の深い神経伝達物質として、ドーパミン・ノルアドレナリンが上げられます。

合目的行動(学習や作業)を促したり、ワーキングメモリーを働かせたりする事に重要な役割を果たしています。
特にドーパミンが適時に機能しないと作業の継続的遂行を妨げたり、注意力を低下させてしまったりします。

脳内の神経伝達はドーパミンなどの神経伝達物質が神経細胞から放出され、隣接する神経細胞の受容体(ドーパミンであればドーパミン受容体)に取り込まれる事で実行されます。
この時放出されたドーパミンの全てが当初の目的を果たすわけではありません。
受容体に結びつけなかったものも少なからずあります。
そのようなあぶれたドーパミンを再利用するために再び神経細胞に取り込む機能があります。

これはこれで合理的な機能なのですが、この機能が過剰に働くと、放出されたドーパミンの大部分が隣接する細胞のドーパミン受容体に結びつく前に再吸収されてしまうと言う現象が起こります。
結果としてドーパミンの伝達、つまり神経伝達が遮断されてしまう事になります。

ADHDの3割以上のヒトが、このドーパミンの再吸収機能が過剰に機能してしまう遺伝性タイプであると言う研究報告があります。

ドーパミンの伝達が円滑に行われないために、ドーパミンと関係の深い神経活動に支障が起こり、不注意や多動性、衝動性などの行動特性が現れると考えられます。

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