偏頭痛は首または、後頭部が痛くなるのが主な症状であり、その対処方法

知り合いがまだ若かった頃、事務所でもすぐ定時という頃に、同僚がいきなり「頭が痛い」と声を上げてデスクに突っ伏してしまいました。
慌てて救急車を呼んだけれどそれが最後だったそうです。
診断はくも膜下出血と言うことでした。

くも膜下出血というのは、大脳の表面を覆う膜のひとつであるくも膜の下に出血ががある状態の事で、脳動脈瘤破裂が主な原因です。
大脳は頭蓋骨の下に外から硬膜・くも膜・軟膜の順に膜で保護されています。
くも膜と大脳の間(くも膜下)には動脈が走っています。
その動脈の一部にコブ(動脈瘤)ができて、それが破裂したときにくも膜下出血が起こるのですが、その瞬間は、生き残った方の証言によると、今まで経験したことのない激しい頭の痛みであるそうです。
この発作の結果は最悪の場合は亡くなります。
それを免れても重篤な機能障害が残ります。

単に「頭が痛い」と言ってもいつもの頭痛(偏頭痛や緊張型頭痛)とは違った別な原因の頭痛もあると言うことです。

身近な人に「頭が痛い」と言われたら貴方は頭のどの部位が痛いと思いますか。
「頭が痛い」と言ったら「頭」に決まってるじゃないか!と突っ込まれそうですが、貴方の言う「頭」とは頭部のどの部位でしょうか。
額?こめかみ?側頭部?それとも後頭部?「頭部のどの部位がどのように痛むか」と言う情報は、どのタイプの頭痛かを判断するのに極めて重要なことです。

ただ、「額やこめかみが痛いと言うんじゃないから偏頭痛じゃない」と素人判断するのは早計です。
と言うのも、頭痛外来で「首から肩にかけてが急に凝ってきて後頭部が痛い。
肩こりが原因の頭痛だからマッサージで首や肩を揉みほぐしてもらえば頭痛も治るだろうと思ってマッサージをしたら後頭部から頭全体が割れるように痛くなった」と受診に訪れる方の中には、実は偏頭痛であった割合が極めて高いのです。

偏頭痛というからには「頭部の左右どちらかが痛むのが偏頭痛」で「頭全体が痛いのは緊張型頭痛」と言うのは定説です。
しかし、どのような法則に例外がつきまとうように、どのような定説にもそれを否定するような事象は案外多数存在するものです。

確かに偏頭痛は頭の片側一方が痛みを感じる頭痛ではありますが、その4割は実は両側性偏頭痛、つまり頭の両方が痛いという気の毒な方々なのです。
ですから、「頭全体が痛いのだから偏頭痛ではない」とは言い切れません。
あるいは、首筋から後頭部にかけてが凝ったり痛みを感じると「肩こりだ」もしくは「肩こりからくる緊張型頭痛」と自己診断しがちです。

しかし、偏頭痛の原因は、中枢神経の脳幹や脳に直属す脳神経のひとつである三叉神経が、直接間接にせよ接触のある血管の拡張が引き金となる炎症だ、と考えられています。
脳幹や三叉神経の根元は頭と首の付け根の内側の奥にあります。
ですから後頭部から首筋・肩にかけてが痛んだり、三叉神経とつながる首の神経の影響で首から肩にかけて強い凝りを感じてしまいます。

実際、偏頭痛と診断された方の3割強が、「痛いと言うよりは首・後頭部が痛くなるの」が主な症状です。

さて、前述の「肩こりを解消したら頭痛が減る」とマッサージをすると頭痛が悪化する原因もそこにあります。
三叉神経は三叉神経脊髄路核でつながる首の神経に影響力があります。
三叉神経の炎症が首の神経を刺激し、首の神経は首から肩にかけて広がる僧帽筋を収縮させて肩こりを生じさせています。
そこで肩こりを何とかしようとしてマッサージをするとどうなるか。
血流を良くするべく自律神経の副交感神経が働いて血管を拡張させます。
血管の拡張が延髄・三叉神経の炎症の原因なのですから、マッサージは逆効果です。
前述の「マッサージをしたら後頭部から頭全体が割れるように痛くなった」というのは起こって当然の現象です。

偏頭痛はどのような形の発作が起こるにしても頭痛が慢性的に繰り返す病気です。
差し迫った生命の危機ではないので、素人診断ですませがちになります。
その場しのぎで市販の痛み止めを服用し続けうちに薬物依存になったりします。
かと言って痛みの発作が起こるたびに我慢をしていてもそれがストレスになって別な病気の原因になりかねません。
偏頭痛は評価の高い頭痛外来で、正しい診断と適切な治療を施せば確実に軽減させることができる病気です。
そうなれば生活の質も大いに改善されるはずです。
身近にネット環境があるならネットで、電話があるのなら電話帳で頭痛外来を探して受診しましょう。

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