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うつと機能性低血糖
「機能性低血糖」とは何でしょうか。
英語の直訳は functionality hypoglycemia です。
functionality は function から出た言葉で機能性という意味です。
問題の hypoglycemia のhypo- は「下の」とか「低い」と言う意味を表す接頭辞で、 glycemia はそのまんまの血糖値です。
まあ、卸元の単語からダメなわけで、これでは高血糖症(hyperglycemia)--これの慢性状態が糖尿病--の反意語のようで、「ハイパーな血糖と逆なんだから問題ないじゃん」と取られかねません。
実際そのような誤解が横行しているようです。
意味的に正確な言い方をすれば「血糖調節障害」となるのではあるまいかと調べてみると、反省する向きもあるようで出て来ました、低血糖症と並記されています。
卸元の英語にも Blood sugar dysregulation とあります。
ともあれ、血糖調節調節障害(低血糖症)ですが、脳にとって唯一のエネルギー源の血中濃度が乱高下すると言う現象が、脳の機能に影響しないわけがありません。
また、血糖値の異常は血糖調節に関わるホルモン分泌の乱調につながりますし、それは脳内の神経伝達物質の分泌異常煮もつながることは容易に推測できます。
事実、ガッツリと脳の機能が低下して様々な症状が現れます。
幻覚・幻聴・不安感・パニック発作・不眠・倦怠感・無気力・異常行動・キレやすい・不登校などの「原因不明」な体調不良として。
このような症状の患者が精神科に担ぎ込まれると、うつ病やパニック障害・統合失調症と診断される可能性があり、対症療法的な投薬治療が施されるだけで根本的な治療は何らなされず、症状は悪化の一途をたどるのが一般的です。
血糖調節異常が精神に異常をきたす原因であるという認識を多くの精神科医が共有していないのが現状です。
軽微な状態であれば気づかない事が多いのですが、自己診断の基準は以下の通りです。
- ◎感情の起伏が激しい(急にいらついたり、悲しくなってメソついたり)
- ◎食事から2~3時間で体調が悪化する
- ◎15~18時の間に不快な症状がある
- ◎食事したばかりなのに空腹感がある
- ◎夜寝る前に何か食べないと眠れない
- ◎早朝覚醒がある
- ◎太っている(太りやすい体質)
- ◎筋肉が少なく脂肪が多い(隠れ肥満:見た目は痩せていても体脂肪率が高い)
- ◎摂食障害(過食)
- ◎中性脂肪が高い(140程度)か異常に低い(50程度)
- ◎総コレステロールが低い(160程度)か異常に高い(250以上)
- ◎血中カリウムの低下(3.8以下)
- ◎空腹血糖値が低い(70以下)か高い(100以上)
- ◎糖尿病の家系
上記の症状が幾つか重なったら要注意です。
では、なぜ身体が血統値のコントロールを平常に行う事ができなくなるのでしょうか。
その説明をする前に、血糖値維持のメカニズムが正常に機能している場合を説明しなければなりません。
食事で摂取された炭水化物が消化されてブドウ糖にまで分解されます。
ブドウ糖の吸収が始まると血糖値は上昇します。
身体は血糖値の上昇を感知して、すい臓のランゲルハンス島からインシュリンと言うホルモンを出します。
インシュリンの機能はブドウ糖関連では次の3つです。
- (1) ブドウ糖が細胞内に取り込まれるように働きかける。
- (2) エネルギーが切れてしまわないように、ブドウ糖を貯蔵可能物質グリコーゲンに変換して肝臓や筋肉に貯蔵する。
- (3) 肝臓でグリコーゲンとして蓄積されず(capacity over)、余ったブドウ糖を中性脂肪として脂肪細胞の中へ取り込む。
3つのうちの(1) の機能で細胞はブドウ糖を細胞内に取り込んでミトコンドリアでエネルギーーに変換します。
この方式は脳・肝臓・腎臓以外の全ての細胞で行われています。
つまり、インシュリンが分泌される事によって血糖値が下がると言う事になります。
この働きは炭水化物の摂取からブドウ糖の生成にともなって機能し、血統値の安定を維持しています。
では、何故に血糖値恒常性機能が失調するのでしょうか。
その原因はどんな家庭のキッチンにも必ず常備されている調味料です。
このような血糖値の異常--過剰・過少を問わず--がここまで現生人類を悩ませるようになったのは、それほど昔の事ではありません。
前世紀の後半までは取るに足らないレベルでしかありませんでした。
と言う事は、わずかの間に私たちの体内に入り込み、インシュリンを始めとするホルモン系を揺さぶり、自律神経を失調させた物質が身近にあると言う事です。
それはどこの家庭のキッチンにも譲位されている調味料。
つまり砂糖です。
同じブドウ糖の材料としての炭水化物の中でも、でんぷん類のような分子量の大きな物質はブドウ糖に消化するまでに時間がかかるため、血糖値は穏やかに上昇しインシュリンの分泌も緩やかにおこなわれます。
ところが、ブドウ糖にまで消化分解されるスピードが異常に速い物質が砂糖なのです。
砂糖はショ糖ともいい、構造がでんぷんに比べてはるかに単純なため、消化分解が極めて簡単かつ速やかであるため、摂取後即座に血糖値が急上昇します。
砂糖はもともと自然界に存在しなかった物質です。
現生人類15万年の歴史に限定しても、ここまで血糖値を急上昇させる物質を摂取した事がありません。
したがって急上昇する血糖値を下げるために、インシュリンを分泌するのですが、通常の量ではとても間に合わないため、追加に追加を重ねて需用に答えていきます。
1時的な現象ならばさしたる問題もないのですが、これが連続して際限もなく繰り返されると、砂糖のような血糖値を急激に上昇させるような炭水化物でなくとも、必要以上にインシュリンを分泌するようになります。
細胞に必要以上に取り込まれたブドウ糖はどうなるかと言うと、インシュリンの機能の中性脂肪に変換されてからだの各所に運ばれて蓄積されます。
血糖調節障害(低血糖症)によって、脳への唯一のエネルギー源であるブドウ糖の供給が急激に断たれると、理性をつかさどる大脳新皮質が機能しなくなります。
その結果、感情がむき出しになったり、衝動的・突発的な行動、判断力の低下などが現れます。
同時に、血統調節障害に陥る事が引き金になって血統値が乱高下すると、インシュリンを初めとするホルモンの分泌も通常とは異なる様相で分泌されます。
ホルモンの異常な分泌はうつ状態、パニック症状、手足の震え、攻撃性、突然の動悸等を引き起こします。
そこで身体は防御体制を気づこうとします。
副腎皮質から糖質コルチコイド、副腎髄質からアドレナリン、ノルアドレナリンなどの血糖値上昇物質を分泌します。
周知のように、アドレナリンは攻撃ホルモンとも言われ、怒り・敵意・暴力と言った攻撃的な感情を引き出します。
ノルアドレナリンは恐怖感・強迫観念・不安感といった感情を呼び起こします。
他方、それらの物質によって自律神経の交感神経が活性化され、不眠・動悸・血管収縮による頭の締め付け・手足の冷え・不整脈などの身体反応も顕在化します。
さらに、急激に上昇する事を繰り返す血糖値に対応し続けたすい臓が疲弊してしまい、それにともなって一気に糖尿病への症状が進みます。
このように血糖調節障害(低血糖症)は心身ともにダメージを与える疾患です。
この疾患を予防する手立てはあるのでしょうか。
それほど困難なことではありません。
砂糖、および砂糖を含む食品を控える事です。
同時に血糖値を安定させるために多くのビタミン・ミネラルが必要です。
具体的にはカルシウム・マグネシウム・カリウム・亜鉛・クロム・マンガン・ビタミンB群・ビタミンCが特に大切です。
(挙げ続けると切りがありません)
それにタンパク質と食物繊維も加えると事。
「なんだ、食餌療法か」
となるわけなのですが、まさにその通りです。
砂糖関係を断ち、血糖値が急上昇しやすい炭水化物(生成された白い穀物)を避け、血糖値の上昇が緩やかになる炭水化物(生成されない茶色の穀物)や、肉類や魚介類、なによりも野菜を積極的に摂取すると言うのが基本方針です。
大きな書店で健康食コーナーを探れば、さまざまな能書きの食餌療法本が出ています。
なるべく持続可能なものを選んで実行してください。
遅すぎる事はありません。
ただし、「糖分が元凶か」と、やみくもに糖質ダイエットに走るのも考え物です。
先述の通り、血糖は全身の細胞のエネルギー源です。
これが慢性的に欠乏した状態が続くと身体はどのような反応をするでしょうか。
手近なところでは筋肉を構成するタンパク質をアミノ酸まで分解してそれをミトコンドリアでエネルギーに変えます。
そのときにカルシウムや亜鉛などのミネラルを消費します。
カルシウムも手近な骨から調達します。
その結果、どうなるか。
筋肉はボロボロで骨はスカスカになります。
歩く事はおろか、座る事も立つ事もできなくなります。
むろん寝てもいられません。
糖質ダイエットにはまって寿命を縮めるお年寄りが増えている事は、時々メジャーな新聞の健康コーナーに記載されています。