統合失調の症状『陰性症状の主な特徴』

統合失調の症状には陽性と陰性があり発症からの時間経過に伴いそれぞれの症状に転移が視られます。

陰性症状の主な特徴は表情の平板化(感情表現が乏しく成る)や 意欲低下が著しい状態です。
これらは陽性症状の経過後に現れる場合が一般的です。
健常な人も日常生活の上で落ち込んだり、高揚しますが陰性・陽性症状はこれらを同一症状として考える事は根本的に異なります。
気分の在り方に加え、統合失調症が伴う場合、(認知機能の低下)が現れます。
認知機能とは記憶、思考、理解、計算、学習、判断など知的能力を指します。
それらの機能障害は社会生活を営む上で重大な影響を与えます。

『選択的注意の低下』は注意すべき事柄の優先度に偏りが顕著に現れ、あえて選択した優先事項への持続的集中が困難に成ります。

『比較照合の低下』は体験や記憶に基づいて現実の事柄に応用出来ない症状です。
蓋然的な事柄に目が行き易く成ります。

例えば異なる項目に対して一部の共通項だけ着目して、同一化(物・人など)して誤認識してしまう事です。
又、比喩的表現に対して真の意味・意図を理解し自分の立場に照し合せる事も困難に成ります。

『概念形成の低下』は物事をグループ化して概念化出来ない事です。
具体的には整理整頓や物事の管理配置の調整が困難に成ります。
比較照合とも現象は重なりますが、類似点が全く同一に見えたり、逆に類似点を有する事柄を別物又は無分別な様に扱う傾向に偏りが観られます。

抗精神病薬との関係

抗精神薬には従来型の定型抗精神病薬と新規形の非定型抗精神病薬とに分ける事が出来ます。

前者の効能は主に暴れたり、騒いだりする陽性症状を抑制する旨、使用にはおのずから制限されます。
具体的には中脳皮質系という所を中心に作用してドーパミンの分泌強制抑制させ、患者の興奮状態を押さえます。
副作用は過剰投与によってドーパミンの抑制が持続的に行われる為に発生します。
結果、陰性症状へ移行する原因の一つに成ります。
陰性症状では認知機能の低下を初め、諸所の運動機能にも影響を与えます。

例えば、漏斗下垂体系と言われる部位に異常が発生する事によりホルモンバランスが崩れやすく成ります。
具体的には月経障害、性機能障害などです。

又、黒質線条体系と言われる部位にも悪影響を与え、錐体外路症状と言われる手足の痺れや震え、動作の緩慢、舌が出たままになったり、目が上を向いたままなど、が現れます。

非定型抗精神病薬はこの様な定型の弱点を補う為に作られた新規格の薬です。
ドーパミンやセロトニンの双方に働きかける事により運動機能障害や認知機能低下などの副作用への抑制効果を有します。
具体的にはセロトニンの過剰(持続的)分泌がドーパミン抑制効果を促す関係からドーパミン、セロトニン双方に適度な効果を持たせ結果的に脳内分泌物質のムラを調整する薬です。

定型抗精神病薬の欠点としては、抗精神秒薬の他、症状に合わせ多種類の薬物で治療するケースが必然的で、結果的に薬剤の大量化に繋がります。
これらを多剤療法又は大量療法として表現されます。

この治療では当初期待される抑制効果よりも副作用が強く現れる事もあり、眠気や手足の震え、耐えがたい程までの眠気で患者自身は薬物服用に抵抗感を強め、効率的な治療の阻害要因に成ったケースが多く見られました。
従って多剤療法又は大量療法を避けつつ、症状に見合った新薬での治療が基本的に望まれています。

陰性症状は発病時の興奮(陽性症状)による大量なエネルギー放出による消耗と上記の様な薬物の過剰投与が重複して発生すると考えられます。
程度の差は在りますが、次の段階(回復期に於けるリハビリ)へ向けてのスタート段階とも言えます。

又、診療側の一方的な方針で患者自身の現状認識や治療に対する理解を差し置いて、プロセスを進めていくと、それ自身が回復への阻害要因に成りえます。
診療機関側は可能な範囲で現状を患者に正確な情報を伝え、投与される薬の必然性を理解させ、自発的に治療プロセスに参加させる事が長期治療には最善であると言われます。
この様な患者自身に於ける治療参加をアドヒアランスと言います。

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