仕事中の偏頭痛は、対処に困りますよね

30代前半のころ、努めていた会社のバブルが崩壊して寒風吹きすさぶ時期に失業した事があります。
会社の事務の不手際で失業保険が出ない事がわかり、慌ててハローワークに日参しました。
バブル崩壊といっても大企業はまだまだイケイケ状態だったので、なんとか3ヶ月契約で事務職にありつけました。

同じ部署には私と前後し同じような経緯で転がり込んできた人間が私を含めて3名いました。
その年の年度初めに行われるイベントの準備作業とかで、とにかくソフトで入力作業を行うのが主で、その他種々の雑用にかり出される毎日でした。

日々仕事に追われ続けている毎日の中で、ハジケ組(なんとも酷いネーミングです)の中で、声や態度ににしはしないけれど、かなり厳しい身体的不調に襲われているのが、端から見ても分かってしまう男子がいました。
男子だから女性特有の事情ではないだろうし、「何だろうか」、と思いました。
疑問をいつまでも疑問のまま持ち続けるほどユトリのある性格ではないので、ある金曜日の終業後に居酒屋に誘って話を聞きました。
すると偏頭痛持ちなのだというです。

偏頭痛と言っても、頭全体が痛む偏頭痛で、週に1度の割合で「頭を鉄の棒で殴られるような」痛みと吐き気が同時に来るというのです。
それでも万難を排して堪えもするが、困るのは頭痛に先立つ30分~1時間前に眼がチカチカして視界のほとんどがぼやけて見えなくなってしまい、その間30分はまったく仕事にならないというのです。
その時センキアンテンという4文字熟語を聞かされたのですが、紙に閃輝暗点とかいてもらって要するにまとに物を見る事ができない状態であることは理解しました。

その同僚の話では、以前の職場は販売業で店長の理解もあって、眼が見えなくなりそうな前兆があると、あらかじめ店長に伝えて30分休憩させてもらっていたのだけど、職場全体の業績凋落にともなうリストラで真っ先に解雇されてしまったそうです。
で、今の職場に就いて最初の頭痛に襲われたときに上司に頭痛を訴えたところ、我慢するように言われて、閃輝暗点の話をしたところ、まったく理解してもらえなかったそうです。
それどころか「そんないきなり眼が見えなくなるなんて、恐いから明日から仕事来なくていいよ」とキレられてしまったそうです。
確かに、怒鳴られていたよなぁと思い出しましたが、その上司というのは、典型的な昭和一桁熱血根性タイプのオヤジで、部下の体調不良を贅沢病・怠け病と決めつけて認めようとしませんでした。

私は頭痛と言えば、お酒を呑んだ翌朝になるぐらいで、丈夫なだけが取り柄の人間なので、慰めの言葉もなく、ただ水割りを勧める事しかできませんでした。

不景気は雇用者側を強気にするもので、その偏頭痛持ちの同僚はそれから半月もしないうちに職場に来なくなり、残された私ともう1人は3ヶ月の雇用契約一杯を地獄の責め苦のような状態で過ごしました。

あれから25年近く経ってしまいました。

偏頭痛薬にも革命的な特効薬トリプタン系製剤が出てきた、と言う情報を新聞で読んだとき、あの同僚の事を思い出しました。
備えあれば憂いなしで、この薬を常備しておけば仕事中の頭痛にも対処できるだろう、と思い込んでいました。

ですが、「仕事中 偏頭痛」でネット検索をすると、なかなか厳しい状況なのは変わっていない事が分かりました、 あの時の上司の世代が昭和一桁世代で、以後、団塊の世代・シラケ世代・新人類世代・バブル世代・団塊ジュニア・氷河期世代と時の流れによって新卒者の呼ばれ方は変わっていきました。
しかし、職場の長になるような人材というのは、いつの時代でも部下の体調不良を認めたがらないと言う傾向は変わらないようです。

某ネット知恵袋を見ていると
偏頭痛が起こるたびに上司や先輩に
「頭痛ぐらいで大袈裟な」
「具合悪いアピール?」
と言われてしまって…。

「自己管理をちゃんとして」
「目が見えないって、眼科に行ったら?」
などと言う文章を見ると、「日本株式会社に揺るぎなし」などと思ってしまいます。

そして、
「病院ではトリプタン系製剤を処方してもらってますが、1ヶ月の上限制限の関係で飲めない事もあって困っています」
「医師に偏頭痛の用の点滴を勧められましたが、仕事中に病院に行くのは難しく…」
「あとは、自己注射が可能なトリプタン製剤「イミグラン」でしょうか」
と言うような個々人の対処法も、対症療法の域を出ていないようです。

偏頭痛持ちの人口は、取るに足らないと無視できるような数なのでしょうか。
そうではありません。
全人口の8.4%(男3.6%、女13.0%)と言うから無視できない数である事は確かです。

全社会的に偏頭痛に関する啓発運動を真面目に考慮しなければならない時が来ているのかもしれません。

少子化で日本人の人口そのものが減り、年老いた人間を支える就労人口が減り続けています。
労働力を移民に求めないとしたら、女性の労働参加は必要不可欠です。
そしてその女性の13%が偏頭痛で、ある日突然、一時的にせよ、眼が見えなくなり、頭が割れんばかりの頭痛で何にも手がつかない状態になるのを放置し続けるのは、非常にもったいないです。

偏頭痛持ちの女性が安心して働ける職場環境の構築は、さらに重要なのではないでしょうか。

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