偏頭痛の対処は冷やして血管を収縮させれば良い

偏頭痛と言えば、若いころに以下のような出来事がありました。

「類は友を呼ぶ」と申しましょうか、20代の後半に同僚と飲食店で食事をしていたら、同僚の友人がやって来て、「取りあえずオレの仕事は終わったよ」とネクタイを緩めつつ同僚の隣に腰を下ろしました。
3月9日の夜のことでした。

「ああ」とか「うう」とか言いつつ眉間を揉み、コメカミを押さえ、ジッとしていました。

店員さんが注文を取ると、飲み物を頼んで額に手を当てています。

同僚が心配顔で「どうしたんだ」と問うと「さっきから頭が痛んでさ」と答えます。

頭痛氏は、それから5分も断たないうちに頭を抱えてうなり始めました。

店員さんが頭痛薬を飲ませて、横になってもらいました。
が、1時間たっても症状は改善を見ません。
まだ23時前でしたが、頭痛氏ともども引き上げることにしました。
食事していたところが札幌の北23条で、私は北18条で、同僚は北27条、頭痛氏は北17条なので私が送っていくことになり、北23条から樽川通の1本東の通りを南下し始めました。
頭痛氏は「すみませんすみません」と謝るばかりでした。

当時の企業では3月と言う月は、確定申告や決算に合わせて、パソコンを使える人間が総出で数字入力の日々を送るのが、慣わしになっていました。
実を言うと筆者も会社の上役の確定申告がらみで領収書の打ち込み作業をやらされて、前日に終わらせていたのでした。
筆者がが「いずこも同じ春の夕暮れってやつですね」と言うと笑い出して、歩いているうちに頭痛が軽くなっていたようでした。

あれは店員が常備していた頭痛薬が効いたのか、雪残る3月中旬の夜気が効を奏したのか、どちらだったのか微妙なところです。

ことほど左様に、突然やってくるのが偏頭痛の痛みです。
たいていは「ズキンズキン」と言うオノマトペが定番ですが、「ジンジン」とか「ガンガン」もあるようです。
いずれにせよ拍動に合わせて耐えがたい痛みが襲ってきます。
仕事も家事も手につかなくなり、中には嘔吐感をともなう方もいらっしゃいます。
偏頭痛持ちの方は意外に多く、全人口の約8%と言われています。

その発生の原因はまだ詳しくは解明されておらず、現在のところ「三叉神経説」が最も有力です。

そのメカニズムは以下の通りです。

  • (1) 何らか理由で頭蓋内部の血管が拡張する。
  • (2) 血管に隣接して分布する三叉神経末端が刺激を受け、血管拡張性の神経ペプチド(CGRP:カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を放出する。
  • (3) その結果、血管が拡張し無菌性の炎症が引き起こされる。
  • (4) 炎症は次々に血管に広がって行く。
  • (5) この刺激による興奮が大脳の痛覚中枢に伝わると頭痛として発現する。
  • (6) (5) の過程で大脳に分布する視覚中枢、聴覚覚中枢、嘔吐中枢に影響を与えて光や音に敏感になったり、嘔吐感を感じたりします。

なお、(1) の「何らかの理由」の中には、セロトニンと言う物質が関わっている事が確認されています。
つまり、過度のストレス性の刺激を脳が受け取ると、血液成分の1つである血小板からセロトニンが放出され、脳の血管が一旦収縮します。
その後、役割を終えたセロトニンが分解・排出されて減少すると、収縮した血管が反動で急激に拡張します。
そして(1) に至るという道筋です。

(1) の血管拡張の誘因を列挙すると以下の通りです。

精神的誘因
ストレス・精神的緊張からの開放・睡眠不足・睡眠過多
内因的誘因
月経周期
環境的誘因
急激な気圧低下・急激な温度変化・人ごみ
食事性誘因
アルコール(上述の文章のように頭痛の麻酔薬のつもりで飲むと、エタノールの周知の作用で偏頭痛は拡大再生産を始めます。)

偏頭痛の原因と誘因はここまで分かっています。

現在のところ、偏頭痛に至るメカニズムの途中を遮断すべく、開発されたのがトリプタン系薬剤(商品名:イミトレックス・イミグランなど)です。
この製剤には主に3つの機能があって、偏頭痛の根本的原因である血管と三叉神経の双方に効力があります。

  • 脳内血管に働きかけて拡張しすぎた脳内血管を元に戻す。
  • 三叉神経からの神経ペプチドの放出を抑制する。
  • 三叉神経が受けた刺激の情報が大脳に伝達されるのをブロックします。

これによって、偏頭痛だけでなく、光や音に対する過敏性・嘔吐感などの症状を緩和することができます。

ただ、いきなりの偏頭痛で薬がない!と言う状態に立たされたとき、どのようにすべきなのか。
中国の格言に「天地不仁」と言う4文字熟語があります。
要するに、世の中は上手くいかないようにできている、と言うことです。

その時は慌てず騒がず痛む部分を冷やしましょう。

偏頭痛は血管が拡張したところが痛むのですから冷やして血管を収縮させれば良いのです。

そして血管や神経の末端の炎症を鎮めれば痛みは和らいでいきます。

同時に、光や音にも敏感になっているので、暗い部屋で安静にしていましょう。

1時間も横になっていればかなり楽になるはずです。

ですので、偏頭痛持ちの方は偏頭痛用の鎮痛剤は無論のこと、鎮静剤の薬効を促進するために、アイスノンやヒエピタの類の冷却材や保冷剤を携行しておくのが賢明です。
暗所が近隣になければアイマスクも携帯しておくと便利でしょう。
何事も備えあれば憂いなしです。

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