季節的な精神疾患『冬季型うつ病』

「何だか冬は憂うつな気分で、寂しくて悲しくなるっ」
「冬は寒いし暗いし、気分が落ち込んでしまって憂うつだ!!」
「恋もしていないのに失恋した憂うつな気分だよ!!」

冬

12月某日に、2つの女子高校が川をはさんで並立する地域のバス停留所で、スマホを見ていたら、喧噪の中でもひときわ大きな声が、幾つも耳に飛び込んできました。

「どこが憂うつなんだ」と思いつつ、インターネットで「冬」と「憂うつ」で検索すると、 「冬季うつ」とか「冬季型うつ病(SAD)」と言うタイトルの記事がドーッと出て来ました。

そこで「冬季うつ」と「SAD」であらためて検索すると「季節性情動障害」とでました。

SADとは季節性情動障害の語源で Seasonal Affective Disorder の直訳です。
そして冬季型うつ病は Winter Depression が語源と思われます。

冬になると憂うつ。
冬になると気分が落ち込む。
冬になると暗い気持ちになる・・・・?!

ウソでしょ、と思いました。
筆者は山奥の豪雪地帯の生まれ育ちで、冬と言えば脳裏にはスキー三昧の楽しい思い出しか残っていません。
そりゃあ寒かったのは確かですが、下がっても精々-30℃代前半で、もっと寒い地域が北海道にはいくらでもあると思っていました。
どちらかと言うと筆者は冬に気分が高揚し元気になります。

とは言え、過去に見たり会ったりした人々の事を思い出してみると、確かに冬になると、気分が落ち込んだり、暗い気分になり、ついつい食べ過ぎたり、眠りすぎてしまったり。
集中できなくなったり、好奇心が少なくなったり、「俺は冬になると冬眠状態の熊だよ」と言うような人が一定の割合でいました。
そして、そのような人々はみんな冬以外の季節では健全な状態でした。

そこで、症状の把握に便利な冬季型うつのチェック表を探すと、以下のような8箇条を見つけることができました。

  • (1) 以前ならできた仕事をうまく進めることができない。
  • (2) 思考力・集中力が明らかに落ちる。
  • (3) 頻繁に悲しくなり、メソついてしまう。
  • (4) 自己否定的になる。
  • (5) 普段より睡眠時間が長くなったり、朝に起きる事ができなくなる。
  • (6) 1日中、横になって過ごしたい。
  • (7) 炭水化物に偏る食事をコントロールできない。体重が増加する。
  • (8) 1度この症状を発症すると、定期的に冬期間限定で反復する。

(1) ~(4) は明らかにうつ病共通の症状です。
ですが、(5) ~(8) は通常のうつ病とは異なる特徴です。

何ともユニークなうつ病です。

変なうつ病と言えば、他罰的で、時と場によって暗かったり明るかったり、自分がうつ持ちである事を平気で公表したり、と言う非定型(新型)うつ病も珍しいうつ病ですが、これに劣らぬユニークさです。

このユニークなうつ病は、うつ病業界ではそのような位置づけがなされているのかを確認するために、アメリカ合衆国のうつ病に関する2大定義を見てみました。

そうすると『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)によると、季節型(with seasonal pattern)との修飾語を持つ反復性大うつ病(Recurrent major depressive disorder)に含まれるとの事です。

もう1つの『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』(ICD-10)でも同様に「F33 反復性うつ病性障害」に含まれています。

と言うことは、別に北海道だけでなく、世界中の、冬には気温が下がって雪や氷の冷凍世界になるような地域には、普遍的に起こる季節的な精神疾患であると言う事です。

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