うつと鉄分欠乏症

精神は脳に宿ると言われてどれほどの歳月があったでしょうか。

往古には精神は心臓や胃、肝臓などに宿ると考えられてきました。
しかし、解剖学や生理学の発展にともない、心臓は単なる血流のためのポンプであり、胃は消化系の1器官に過ぎず、肝臓は物質変換機である事が解明されました。
どれも生命維持には必要不可欠な器官ではありますが、精神は宿りえないと言う事です。

ところが、その肝心な脳についての研究は、脳そのものの複雑さや多岐にわたる機能のために、先進国が巨額の予算を費やしてきたにも関わらず、順調とはいえません。
21世紀になってかなり多くの新たな知見が発表されてきましたが、いまだ「群盲撫象」の段階です。
とは言え、「こころ」とか「精神」が宿る器官と言っても、しょせんは肉体の一部であって、全身の状況からは無縁でありえないことが解明されてきました。

たとえば、脳が活動するためにはエネルギーが必要です。
そのエネルギー源は食事で得られる栄養素です。
栄養素の摂取が十全に行われず、脳がエネルギー欠乏状態に陥ったらどうなるでしょうか。
正常な活動できなくなる事は言うまでもありません。

様々な精神疾患の原因の重要な要素として種々の栄養素の欠乏があることが解明されつつあります。

健康診断の時には必ず血液検査が行われますが、調査結果が記載されている表には、最も眼につきやすい場所に「血糖値」があります。
血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖のの事です。
単位は(mg/dl)で「1dl=100mlに何mg含まれているか」を表わします。

脳は24時間常に休む事なく活動しており、しかも脳の活動エネルギーはブドウ糖を細胞内のミトコンドリアの中で分解する事によって得ています。
したがって、血液中にはある程度以上の量のブドウ糖が必要です。

では糖質だけ食べていればエネルギー不足にならないか、と言うとそうではありません。

ミトコンドリア内部でブドウ糖をエネルギーに変換するためには、ビタミンB群、ビタミンCが必要です。
鉄、マンガン、、マグネシウムなどのミネラル類も欠かせません。

どんなにブドウ糖が豊富にあっても、ビタミン・ミネラルが不足するとエネルギーを得る事ができなくなります。
ビタミンB群とミネラル類は肉や魚などのタンパク質を多く含まれます。
ビタミンC摂取のためには野菜や果物を食べなければなりません。
つまるところ、糖質をたべるだけではダメという事です。

脳のエネルギー不足を回避し、精神疾患を防ぐためには、以下の事を気をつけなければなりません。

  • (1) ビタミンB群、ビタミンCの不足
  • (2) 糖質の取りすぎ
  • (3) 鉄分の不足
  • (4) タンパク質の不足

特に女性の方に要注意なのが(3) の鉄分の不足です。

人体における鉄の機能は多々ありますが、何と言っても最大なのは、血液中の酸素キャリアー赤血球を彩るヘモグロビンの構成物質としてです。
ヘモグロビンの機能は「酸素の多いところでは酸素を保持し、酸素の少ないところでは酸素を放出する」と言う赤血球の機能を担うものです。
ヘモグロビンはヘムと言う鉄原子を含んだ色素と、グロビンと言うタンパク質からできています。

したがって、体内の鉄が不足するとヘモグロビンを作れず、貧血になってしまいます。

この症状を「鉄欠乏貧血」と言います。

鉄欠乏貧血になると酸素を全身に運ぶ事ができなくなり、酸欠状態になります。

それが次のような身体的な症状として現れます。

  • ◎たちくらみ・めまい
  • ◎疲れやすい
  • ◎筋力が低下して、階段の上り下りが辛く、重いものをもてなくなる

などです。

また精神的な症状としてモノアミン系神経伝達物質欠乏症として現れます。

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